塗料選びの注意点
塗料の選び方として、重要な注意点がありまして、材料の適材適所を知る必要があるということです。
例えば、金属には錆止めの下塗りが基本とし、上塗り材は金属用の硬度の高い塗料を使用しなければなりません。
金属に外壁の塗料のような弾性質の塗料は使用しません。
また、呼吸をする素材(ALCやモルタル等)には呼吸を妨げるような塗料は膨れを引き起こす場合もございますので、この外壁の素材には、この下塗り材を塗り、この上塗り材で仕上げる、
といったような適材適所が塗料には多くあります。
しかし、一般の方はペンキはどこにでも塗れると思っている方の方が多いのです。よくあるのがアルミ素材のものに、外壁の色でいいから、ついでにここも塗ってもらえませんか?と言われるケース。
これは、外壁で使用する塗料の多くはアルミに密着しないので、剥がれやすくなってしまいます。
そのまま言われたとおりに塗ってしまうと、1.2年後に剥がれたときに「塗って1.2年で剥がれた」とクレームになってしまう場合が多いため
業者さんも注意が必要です。
善意でやったことがクレームに繋がってしまうのですからね、このような、塗料の密着については、下塗り材の選定が一番重要な部分です。
我々工事業者はお客様にいつの時代でも適正なアドバイスやご提案をするために生涯学び続けなくてはいけないのだと思っております。
屋根のおすすめ塗料
ロックペイント ユメロック(2液シリコン樹脂塗料)
当店おすすめスタンダード品 耐用年数10年
当店では長い期間採用している塗料です。過去にメーカー別塗り分け試験をしたときに、耐候性、摩耗性共にとても優秀な成績を出した塗料でしたので信頼の実績があります。
当店のある山形県では屋根に雪が積もりますので、耐候性だけを重視した塗料よりも雪や氷の滑走で剥がれないような耐摩耗性のある塗料選びが重要になってきます。
AGC ボンフロンGT(2液フッ素樹脂塗料)
当店おすすめハイグレード品 耐用年数20年
AGCが世界に先駆けて開発した世界初高性能フッ素樹脂塗料で何年たっても変わらない美しさの塗料です。
フッソの原料はホタル石で望遠鏡や高級光学レンズ材としても使われてます。ラジカル制御+フッ素で高い耐候性を持ち、山形のような厳しい気象条件下でもしっかりと建物を保護します。
また、セルフクリーニング効果もあり汚れを洗い流し、美しい外観を長く保つことができます。
例えば簡単に塗装できない急こう配の屋根や、足場が欠かせない建物なんかは足場代を考えれば、できるだけ長持ちさせた方がメンテナンスコストがかかりませんのでそんなお客様には特におすすめです。
日進産業 ガイナ(無機特殊断熱塗料)
当店おすすめ機能性塗料 耐用年数15年
ロケットにも採用されている特殊断熱塗料で、屋根に塗装すれば高い断熱効果で建物を暑さ寒さから守ってくれる塗料です。
真夏のトタン屋根でも素足で上がれてしまうほど熱を通しません。
また、断熱効果のみならず防音効果も付与できます。部屋の内部に塗装すれば結露防止や魔法瓶のような断熱効果、消臭効果等の効果もあります。
ガイナは無機塗料ですのでフッ素よりもグレードは高く塗膜自体の耐候性は高いのですが、デメリットもあり10年経っても機能性の効果は続きますが、外部に塗装すると汚れが付きやすいという特徴もあります。
美観よりも機能性を重視する方にはおすすめです。
(ガイナには抗菌剤を混ぜることで汚れを付きにくくもできます)
ラジカルとは?
ラジカルとは白顔料に含まれている酸化チタンが紫外線を浴びることで活性化される劣化因子を指します。
そしてラジカル制御型塗料とは、この劣化因子を抑えることで本来持つ樹脂の力を最大限発揮できる塗料です。
この文章ですと何となく長持ちする塗料なんだろうなあ、と想像する方が多いと思いますが、実際2010年頃からアクリル樹脂やシリコン樹脂でラジカル制御型が出始めた材料ですので、実際建物に塗装した事例が少なくまだまだ実績がありません。
現在はラジカル制御型のフッ素樹脂塗料なんかも出ており、どんどん塗料も進化していくなあと感じております。
山形の気候だと夏は暑く冬は雪が積もりますので、塗膜には悪環境であると考えられます。この塗料がどれだけ耐候性があるか、当店の目で今後しっかりと確認していきたいです。
1液塗料と2液塗料の違い
1液塗料はよくホームセンターで売っているような、缶から出したらすぐ使える塗料です。空気中の酸素や湿気等に反応して固まる性質があり、値段も安価なものが多いです。
取り扱いが手軽で作業性がよく、DIY向きの塗料です。使った塗料は封をしておけば翌日も同じように使えます。
通常、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素とグレードが高くなっていくのですが、1液の場合は1液シリコンよりも2液のウレタンの方がグレードが高くなります。
2液の場合は主剤と硬化剤に分かれており反応硬化型といい、一旦主剤と硬化剤を混ぜてしまうと封をしても翌日使うことができなくなります。
主剤と硬化剤の混ぜ合わせる比率なんかも守らなければ硬化不良が起きてしまい、塗料本来の性能を引き出せなくなります。
簡単に言えば1液よりも2液塗料の方がいい塗料だ、と覚えておけば良いでしょう。
水性塗料と溶剤塗料の違い
水性塗料の特徴でメリットは、臭いが少ない、人体に害が少ない、リフティングの心配がない、下地への影響がない、扱いやすい、デメリットとしては氷点下で凍る、溶剤のような艶が出ない。
溶剤塗料の特徴でメリットは耐候性が高い、密着力が強い、艶がいい等があります。デメリットは、臭う、人体に影響がある、扱いづらい、等があります。
水性塗料は近年、建築塗装の主役になってきております。
2000年頃までは住宅の塗装工事というと全てシンナーで薄めるタイプの溶剤塗料が主流でした。
その頃から水性の塗料がチラホラ出始めてきましたが、どれも溶剤塗料のような信頼感が無く剥がれの心配等で使われませんでした。
しかし、そこから塗料メーカーの研究開発が進み現在では外壁の塗装は基本的に水性塗料が選ばれるようにまでなりました。
鉄にはまだまだ溶剤塗料が主流ですが、水性塗料の錆止め剤が登場するなど、今後の水性塗料の伸び代に注目しています。
無機塗料とは
無機塗料とは塗料に無機物(鉱物、セラミック、ケイ素、等)を含有させ生成した塗料です。
有機物ではないので紫外線劣化に対し高い耐候性が期待できます。また汚れにくい特徴や燃えにくい性質もあります。
ただ、これは塗料メーカーが謳っているだけで新しい種類の塗料なだけに、本当の性能はまだまだ実績も足りません。
塗膜も硬い塗料が多く、建物の動きによるひび割れに対して弱いという弱点もあります。
現在は無機塗料も各メーカーの研究開発も進み、動きへの追従性も兼ね備えた無機塗料も出ているようです。
これも無機塗料と判断する明確な線引きが業界内で確立されていないため、どれだけ無機物を添加すれば無機と呼ぶのか?現在は誰にもわかりません。
こういう材料は今すぐ採用するのではなく、一旦様子を見てからの方がいいかなと思います。
当店ではフッ素までは実績も少しづつ出てきましてのでお勧めしてますが、当店のお客様を実験台にするわけにはいきませんので、今後も新しい塗料の動向に注目していき有益な情報をご提供していきます。
断熱塗料と遮熱塗料の違い
断熱塗料は熱が物体を通す働き、つまり熱伝導率を抑える作用があります。遮熱塗料は熱を反射し物体の表面温度の上昇を防ぎます。
例えば屋根に塗った断熱塗料と遮熱塗料の違いで考えると夏の場合、断熱塗料であれば屋根表面に当たった太陽光の熱を部屋内部に伝えることがないので部屋の中は太陽光によって受ける熱の影響を抑えることができます。
冬の場合、屋根に積もった雪の冷たさを部屋内部に伝えることがありませんので部屋の温度低下を抑える働きがあります。
遮熱塗料の場合は夏は太陽光を反射しますので部屋内部の暑さを軽減できます。
しかし、冬、屋根に積もった雪の冷たさは部屋内部にまともに受けてしまいます。
そもそも遮熱塗料というのは太陽光の熱を反射させるのにメリットがありますが、白の塗料を屋根に塗ればそれだけで遮熱効果があるのです。(色により熱吸収が違う)
遮熱塗料は黒っぽい色の塗料も出てますが、黒っぽい遮熱塗料より遮熱と謳ってない白の塗料の方が遮熱効果は高まります。
断熱塗料の場合は熱の伝導率が低いので、夏の暑い日差しでも冬の厳しい積雪でもその熱を部屋内部に伝わせない働きがあるので通年で考えると断熱塗料の方が数段機能性が高いということになります。
また、部屋内部に塗装した断熱塗料の場合、部屋の中を魔法瓶のように包んでしまいますから、冷房にしても暖房にしても効率よく部屋を快適な温度に調整してくれるのです。
セラミック塗料とは
塗料にはアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、の順にグレードが高くなり耐候性が増します。
そしてセラミックというのは無機物(石、陶磁器、砂、ビーズ、等)がその塗料に配合してあり耐候性を高くする作用があります。
しかし、これは混ぜ合わせる塗料のグレードに依存している部分もあります。
例えばアクリルにセラミックを配合させ耐候性を高くしても、塗料の樹脂そのものが耐候性が悪かったら当然モチも悪くなります。
またセラミック塗料は硬い特性もありますので、建物の動きに追従しにくく割れてしまうかもしれません。
そしてセラミックは塗料に何%配合したらセラミック塗料と謳っていいという規定はありませんのでセラミック塗料=高耐候性というのは鵜呑みにしてはいけない部分です。
いまや塗料業界も各メーカーと差別化しようと沢山の新製品を生んでますが、本当にいい塗料は我々が使っていいものをお客様にご提案するのが大事なんだと思います。
艶の種類と特徴
塗装が仕上がった状態のピカピカした艶は本当に美しいですよね。艶の良さというとやはり車のボディーやピアノなんかは本当に美しい艶です。
艶が良く見える要因は塗料の種類にもよりますが、一番の要因は下地です。傷一つない滑らかな下地に艶ありの塗装を施せばとても美しい艶が出ます。
逆に表面がザラザラな面に艶あり塗料を塗ると美しい艶は出ません。艶は下地の影響をかなり受けるというのを頭に置いて頂ければと思います。
屋根や外壁も下地のデザインによって艶の見え方も違ってくるのです。
また、塗装をする道具でも艶の違いが出ます。例えば車のボディーに刷毛とローラーで塗装したらと考えると、吹付に比べ艶が落ちます。
これは顕微鏡で塗装面を見ると表面が平らじゃないからです。
通常、車のボディーは吹付して更に機械で磨くのですが、これにより表面の吹き付けの肌の段差を無くしツルツルに仕上げるのです。
建築塗装の場合で艶を出したい時は塗料が乾かないうちに(液体の内に)塗装したい部分を一気に仕上げる必要があり、途中で乾いてしまうと塗り継ぎといい、艶が不揃いになってしまい艶ムラが生じてしまいます。
これは熟練の塗装職人の腕の見せ所でもありますね。
艶には全艶、7部艶、5部艶、3部艶、艶消しというように塗料で艶を調整できます。
艶あり塗料の方が耐候性が良いというのもあり、建築業界では艶ありを選ぶお客様が多いですが、塗替えで新築っぽい仕上がりにしたいのなら5部艶か3部艶あたりの方が美しく仕上がるでしょう。
耐候性を取るか、それとも仕上がりの美しさを取るか、これだけでも艶で悩まれる方がいらっしゃると思いますが、工事業者がお客様の要望をしっかり聞いて満足いく仕上がりにするためにも、塗料選びって事前準備の中でも結構体力使う大事な打ち合わせなんですよね。
塗料によっても半艶で仕上げやすい塗料からムラになりやすい塗料もありますので事前打ち合わせはしっかりと行いましょう。
溶剤の艶消しや半艶、またはシルバー等は、タッチアップ(補修塗り)が効かない塗料も多いので、気を付けなければいけません。